優良資産に組み換えよう!

土地オーナーによくある提案

 建築会社や不動産業者は、未利用地や駐車場などの低利用地を見つけては、法務局で土地所有者を調べて、「アパート・賃貸マンション・老人ホームを建てませんか」などと提案してきます。
 今回は、この不動産オーナーについて考えてみます。

賃貸住宅=相続対策となるか

 手元に現金があるのに「借金をして賃貸住宅を建てれば相続対策になる」という話をよく聞きます。実際にそうでしょうか?
確かに借金をすればマイナスの財産が増加しますが、同額の現金が増加しますので、プラスマイナス0となり、相続対策としての効果はありません。


相続対策は、相続税評価の低い資産に組み換えることが本質です。土地の相続税評価は時価の8割程度で、建物にいたっては、5割程度です。さらに貸家になると借家権の評価減が30%得られますから、50%×30%で、時価の35%程度まで下がります。しかも貸家は収益を生みますから資産価値の高い財産となります。
このように、現金で建てても、借金で建てても借金そのものには節税効果はありません。お金を評価の低い資産に換えて初めて節税効果が生まれるのです。
特に時価よりも相続税評価の方が高い土地もありますので、そういう土地は売却して、資産価値(収益性)は高いが相続税評価は低い賃貸物件を取得する、つまり資産の組み換えが相続税対策では有効です。


利回りを考える

 ハウスメーカーの担当者が土地オーナーに提案する利回りは「年間家賃収入÷建築費」です。一方不動産投資ファンドが考える利回りは「年間収支÷総投資額」で、この年間収支の90%以上を配当という形で投資家に還元しています。
 年間収支=年間家賃収入-年間経費 で 総投資額=建築費+諸費用+土地価格です。この差を具体例で検証してみましょう。
 建築費      1億円
 諸費用    500万円
 土地価格     1億円
 年間家賃収入 1,000万円
 年間経費   200万円
結果、
 ハウスメーカー提案の利回り 10%=年間家賃収入÷建築費
 本来の利回り     3.9%=(年間家賃収入-年間経費)÷(建築費+諸費用+土地価格)となります。

一般的に不動産投資における利回りは、7%~8%といわれていますから、土地オーナーにとってこの投資は良いとはいえません。
 それは、不動産を売却するときに結果が現れます。

賃貸用不動産の売却価額

 賃貸用不動産の中古での売却価額は、収益還元法で決まります。つまり先の例では、年間収支が800万円です。これを購入する人の期待利回りを8%とすると、800万円÷8%=1億円が売却価額となります。
土地・建物併せて2億円の不動産は約半額でしか売れないということになります。また、売却するときは仲介手数料等もかかりますから、実質の手取りは半額未満となり、さらに、建物を借金で建てたとなると、その借金返済により手元にはお金が残らず、みすみす土地を失いかねません。
ということは、土地オーナー(地主)も実質利回り7%~8%が投資の目安となります。

賃料は立地でほとんど決まる

 賃料は、デザイン性などの付加価値も決定要素ですが、同じ築年数であれば駅前の方がバスなどを利用するところよりも、賃料が高く、回転も速いです。そこで、

従来の土地を売却して不動産投資をする

 土地オーナーは自身が所有している土地の収益価値が少ない場合は売却して、駅前などの収益性の高い不動産に投資すべきです。
 先の例では、1億円で建売業者などに売却して、その代金を元手に建築費相当である1億円を借金で調達して2億円の収益不動産を購入します。
 この場合のメリットは、収益を期待できる物件を自分の好きな場所に購入できる、つまり場所を自由に選択できる権利が土地オーナーに発生するのです。駅前、学生街、人口増が期待できるとことなど好きな場所の不動産を購入することができます
 そして、利回りが8%であれば、年間収支は2億円×8%=1,600万円 と先の例の2倍になります。売却をするのであれば、1,600万円÷8%=2億円でロスもほとんどありません。
 したがって、もともと所有している土地が人口減少を伴う場合や利便性が悪く収益性が期待できない場合は、その土地は売却して、より収益性が高い不動産を購入する。すなわち優良資産に組み換えることが大切なのです。
 

このコラムは、平成25年4月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談下さい。