物納より譲渡?

 平成25年12月に「東証一部上場の某玩具メーカーの前社長の保有株を子供4人が相続した」旨、報道されていました。死亡時の時価総額では、株式だけで約1600億円にもなり、相続税は約50%…800億円になります。この納税方法について、現社長は「親族からの申し出があれば自社株買いを実施する計画がある」としています。
 今回は、この自社株買い(金庫株)が納税とその後の株式保有割合の観点から有効か否かを検討したいと思います。

なぜ自社株買いか?

 現社長は、なぜ「自社株買いを実施する計画がある」と述べているのでしょうか?それは、租税の納付方法は、金銭での納付が原則だからです。

自社株買いした場合の課税は?

 会社が自社株買いをするということは、売却側(相続人)の課税関係は、譲渡(所得)ということになり、譲渡益がでれば所得税住民税、そして復興特別所得税が課税されます。
 すなわち、相続人は相続税の他にも税金が発生することになります。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は次の算式で計算します。
譲渡所得=譲渡収入-取得価額(購入手数料及び名義書換料を含む)-売却手数料

譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古いなどのため取得費が分からない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることも認められます。実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます
 例えば、ある銘柄の株式等を500万円で譲渡した場合に取得費が不明なときは、売却代金の5%相当額である25万円を取得費とすることができます。

(参考) 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の取得費の特例
  平成13年9月30日以前に取得した上場株式等で一定のものを、平成15年1月1日から平成22年12月31日までに譲渡した場合には、その上場株式等の平成13年10月1日における終値の80パーセント相当額を取得費とすることができましたが、平成22年度税制改正により、適用期限(平成22年12月31日までの譲渡)の到来をもって廃止されています。

取得費加算の特例

 また、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合には、短期間で相続税と所得税が課され税負担が重いため、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算する制度があり、これを「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といいます。

計算例

 以上を踏まえて、一定の条件を当てはめて、今回、自社株買いした場合について検証したいと思います。なお、検証にあたり相続人を一人にするなど、一部前提を単純にします。
 
  [前提]
1. 一株あたりの相続時の評価額 @ 11,300円
2. 相続株式数 1,416万株
3. 一株あたりの売却価額 @17,300円
4. 取得価額は不明
5. 譲渡費用は考慮しない
6. 相続財産は当該株式のみ
7. 相続人は一人
8. 所得税、復興特別所得税及び住民税の合計税率は20.315%

[計算結果]

 計算過程が相続税の計算と所得税の計算で複雑ですので、計算結果のみ記載すると、相続税及び所得税、双方を納めるのに約532万株(37.5%=532万/1,416万)を売却しないといけません。

 課税されないためには?

 一方、所得税が課税されないために、相続財産で相続税を納付する物納という制度を利用する方法もあります。相続税では、一定の要件はありますが、物納による納税も認められていますので、物納が認められれば、それで納税が完了します。従って納税方法について相続財産の売却の他に相続財産による納税も検討するべきです。

物納の要件は?

 租税は、金銭での納付が原則ですが、相続税については、金銭納付の例外として、一定の相続財産による物納が認められています。物納の許可を受けるためには、次に掲げるすべての要件を満たしていなければなりません。

<物納の要件>
① 申請金額が延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
② 申請書及び物納手続関係書類を納期限まで又は納付すべき日に提出すること
③ 物納適格財産であること

<物納申請財産の選定要件>
① 物納申請者が相続により取得した財産で日本国内にあること
② 管理処分不適格財産でないこと
③ 物納申請財産の種類及び順位に従っていること
④ 物納劣後財産に該当する場合は、他に適当な財産がないこと
⑤ 物納に充てる財産の価額は、原則として、物納申請税額を超えないこと

詳細は、平成25年11月のコラムに掲載しています。

物納と譲渡どちらがより多くの株式を残せるか

 物納の場合… 708万株=1,416万株×50%
 売却の場合… 884万株=1,416万株-532万株
と、今回は売却の場合の方が多く株式を残せそうです。

分岐点は?

 今回、売却の方が多くの株式を残せるのは、相続時よりも売却時の方が株価が上昇していたからです。細かい計算過程は省略しますが、本件では分岐点は約15,500円程度でした。
 従って、相続財産そのもので納税する物納か、相続財産を売却して納税するかはシミュレーションが必要になります。

最後に…

 現社長が自社株買いに言及したのは、市場で売却すると株価に影響を及ぼすことを考慮しているからだともいえますが、相続時と納税時の株価によっては、物納は非常に有効な手段で、〇〇財務局が大株主欄に掲載されている上場会社もあります。

 

このコラムは、平成26年1月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談下さい。

 

 

 

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