「障害者や未成年者が相続すると税金は安くなりますか?」

Q:私(82歳、女性)には、長男(52歳・保健福祉手帳の障害者等級1級)と長女(48歳)の二人の子供がいます。

私には、夫から相続した自宅や賃貸不動産、預貯金があり、生活面の心配はありません。長男の面倒は今まで私と長女が見ており、私の死後も引き続き長女が面倒をみてくれることになっております。

ところで、今まで私の財産については、兄妹で2分の1づつと考えておりましたが、そもそも長女は、障害で事理の判断ができない長男と遺産分割協議ができるのでしょうか?

遺産分割協議ができない又はできる場合でも手続きが煩雑であれば、長男の面倒を全てみてくれる見返りといってはおかしいのですが、長女に遺産の全てを相続させる遺言を遺そうかと考えております。

上記のいずれいかの方法で相続させた場合ですが、所得税同様に、相続税でも相続人に障害者がいる場合税金が安くなる制度があるのでしょうか?

A:
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江東区門前仲町の税理士 渋谷広志(しぶやひろし)です。



ご質問ありがとうございます。
まず、事理の判断ができない長男と遺産分割協議ができるかどうかですが、最終的には家庭裁判所の判断にはなりますが、状況から判断するに、直接、長男と行うことはできませんので、家庭裁判所に長男の成年後見人を選定して頂き、その成年後見人と遺産分割協議を行う手続きになる可能性が高いです。
今回のケースの場合、長女が長男の面倒を引き続きみるということですので、手続きの手間や費用、そしてその効果を考えた場合、この方法はお勧めしませんので、遺言や、家族信託制度を利用することをお勧めします。
(注)家族信託については、別の機会に解説します。

次のご質問ですが、相続税にも障害者控除制度はあります。しかし、所得税と少し違っていて、所得税は一定額を所得から控除しますが、相続税の障害者控除制度は、相続税そのものから一定額を控除することができ、また、一定の要件はありますが、長男から控除しきれなかった場合は、残額を長女からも控除できるという点で異なります。
この「障害者控除制度」と同じような制度で「未成年者控除制度」というものもあります。両制度は似ておりますので、併せて解説いたします。
初めに概要を解説しますと、障害者控除は、85歳未満の障害者が相続等した場合に、未成年者控除は、未成年者(※)が相続等した場合に税金が安くなる制度です。
※現行法では20歳未満ですが、民法改正と合わせて2022年4月1日以降、18歳未満に改正される予定です。以下、その前提でご高覧ください。


1.誰に適用されるか

【未成年者控除】
次の3要件をすべて満たした未成年者がいる場合に適用できます。

1.相続又は遺贈により財産を取得すること
2.居住制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者であること
3.法定相続人であること

「居住制限納税義務者? 非居住無制限納税義務者???」となったかもしれません。日本に住所を有している人は、原則として適用対象になります。それ以外の人(日本に住所を有していない者や、住所を有していてもの期間が短い人)は、税理士等に個別に確認してください。

ご質問者の今回のケースでは、3要件を満たしますが、未成年者ではないため適用対象になりません。

実際、私(渋谷)の経験では、未成年者控除は代襲相続人(孫やひ孫、兄弟姉妹の子)が相続したケースしか適用したことがありません。

【障害者控除】
次の3要件をすべて満たした障害者がいる場合に適用できます。

1.相続又は遺贈により財産を取得すること
2.居住制限納税義務者であること
3.法定相続人であること

非居住無制限納税義務者の文言が外れていますね。非居住無制限納税義務者とは、相続時に日本に住所を有していない人のことです。


2.控除額は?

次に、控除額について解説します。
【未成年者控除】
未成年者控除は次のように計算します。

10万円×(20歳-相続開始時の年齢(注))
(注)1歳未満の端数が生じた場合は切り捨てします。

20歳までという上限があるため、控除額が少なくなる傾向にありますが、孫や兄弟姉妹の代襲相続人が複数人いるケースでは、控除総額はそれなりになります。

【障害者控除】
 障害者控除は次のように計算します。
(一般障害者)
10万円×(85歳―相続開始時の年齢(注))

(特別障害者)
20万円×(85歳―相続開始時の年齢(注))
(注)1歳未満の端数が生じた場合は切り捨てします。

未成年者控除と異なって、85歳まで適用できるので控除額が大きくなる傾向にあります。
一般障害者と特別障害者の違いは交付される障害者手帳の障害等級で判断します。
具体的には、

身体障害者手帳をお持ちの場合
身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級と記載されている方は、特別障害者に該当し、三級~六級の方は、一般障害者に該当します。

精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方
正式には、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条の保健福祉手帳」といいますが、こちらの手帳に障害の程度が、一級と記載されている場合は特別障害者、二級又は三級と記載されている場合は一般障害者となります。
最終的には医師の判断にはなりますが、私(渋谷)の経験では、一級と記載されている方との遺産分割協議は困難と判断されています。


3.控除しきれない場合は?

ところで、実際に相続等した障害者の控除限度額が600万円にもかかわらず、その障害者の相続税が400万円の場合、(相続税400万円―控除限度額600万円=△200万円)となり、200万円が浮きます。この200万円はどうなるのでしょうか?

納税はしていないので、還付されることはありませんし、日本は給付型税額控除制度を採用していないので給付されることもありません。
答えは、この残った200万円は、他に相続人で税金を納める人がいれば、その人から控除することができます。
ただし、その障害者の扶養義務者であることが要件となっております。

相続税における扶養義務者とは、相続税の基本通達で、相続開始時の次のいずれかの者と挙げています。
1.配偶者
2.直系血族
3.兄弟姉妹
4.家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
5.三親等内親族で生計を一にする者
このように、所得税と異なり、実際に扶養しているか否かは要件となっておりませんので、少し範囲が広いのです。

4.注意点

以前、私がかかわった事案で重度障害を患っている弟をお持ちの長男が遺言ですべての財産を相続するというケースがありました。なんでも、亡くなったお父様(母は既に他界)がご自身が亡くなったあと、障害をお持ちの次男のために、長男がすぐに預貯金を含めてすべての財産を自由に使えるように配慮したとのことでした。
この相談を受けたときに私は、成年後見手続き等を経ずに弟さんを含めた相続人に財産をすぐに利用できていいことだと思うと同時に、障害者控除が適用できるか否かが気になりましたが、相続財産を調べて安心しました。
幸い、次男は100万円に満たない生命保険金の受取人になっていたため、制度を使うことができたのです。
これらの制度の注意点は、適用を受けるためには、相続人である未成年者又は障害者が相続又は遺贈により財産を取得(生命保険金や退職金のように相続税法の規定によるみなし取得でも大丈夫です)していないと適用できないという点です。

このように、税法は奥が深いので使い方を間違えると有利な制度が利用できない場合もあります。以前のケースでは、遺言作成を請け負った方が、この保険金の存在を知っていて遺言作成のお手伝いをしたか定かではありませんが、遺言の作成など、最終的に税金が発生する行動を起こす前に税の専門家に相談することをお勧めします。


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このコラムは、2019年3月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、予め税の専門家にご相談してください。
本コラムの内容そのものに対するご質問は受付しておりません。ご了承ください。

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