物納戦略の再構築

現在開催中の通常国会に上程された税制改正法案は、与党が各議会の過半数を占める状況では、3月下旬には改正法案は可決成立する見込みです。
その税制改正法案のひとつに相続税の物納順位の改正が規定されており、今後の物納戦略の見直しが必要な場合がありますので、解説するとともに対応策について私見を述べさせて頂きます。

物納制度の概要

税金は金銭納付が原則ですが、相続税については延納で金銭納付が困難な場合には、納税者が申請し承認を受けることで、相続財産で物納できる制度があります。

物納の要件

次の要件をすべて満たしている場合に物納の許可を受けられます。

(1) 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
(2) 物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあること。

第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
第3順位 動産

(3)   物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。
(4) 物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

改正の内容

現行第2順位の上場株式や上場投資信託等の物納順位が第1位順位に繰り上げられます。
この改正は、平成29年4月1日以降の物納の許可申請から適用されますので、すでに相続が発生している方でも物納の要件を満たせば適用を受けられます。

実務上の留意点

上場株式等の物納の場合、土地等の不動産の物納と比べて境界や権利関係の確認等が無いため比較的容易に手続きができます。

物納のメリットは
(1) 物納の収納価額は相続税の課税価格で、含み益が発生していたとしてもその含み益には課税されない。
(2) 物納申請は相続があったことを知った日から10ヶ月以内と比較的期限が長い
ことです。
そして、上場株式等を日々価額が変動するため、
売却により手取り額 > 上場株式等の相続税の課税価格 の場合は、売却して金銭納付することが可能ですし、逆であれば、その上場株式等を物納申請することで、多くの相続財産を残すことが可能になります。
留意点は、物納財産は国内財産に限られているため、上場株式等が国内財産が国外財産かの確認です。

 

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このコラムは、平成28年4月1日時点の法令を基に掲載日までに入手した情報により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。