事業承継税制の留意点

1.事業承継税制とは?

事業承継税制とは、後継者である相続人・受遺者等が、経営承継円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続・遺贈により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税が免除される制度をいいます。

 

2.平成30年度改正の特徴

この事業承継税制について、平成30年度の改正により、これまでの一般措置に加え、納税の猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引き上げ(80%から100%)等が10年間の時限付ではありますが、特例措置として創設されました。
 

3.甥や姪、親族外の人を後継者にすることのハードルが下がった?

平成30年度改正により、全株式が納税猶予の対象となり、相続・遺贈の場合にこれまでの80%から100%納税猶予を受けることが可能になったことから、これまで、納税資金がネックでなかなかできなかった甥や姪、さらに進んで親族外の人を後継者にすることが可能になりました。・・・が、本当にそうなのでしょうか?

 

4.いいことばかりでない?

確かに、相続税の納税資金面からみれば甥や姪、親族外の人を後継者にすることが可能になりましたが、ハードルはそれだけではありません。
仮に、彼らを後継者として、自社株式を遺贈すると、遺贈者=先代の相続手続きに何度も関わることになります。彼らは、先代の相続の際には、株式の遺贈取得者となり、先代の相続税の申告が必要となります。
そうすると、理論的には、先代の不動産や預貯金の内容などを含む相続財産の全てを知ることができるのです。
以上から、事業承継税制を利用して甥や姪、親族外の人を後継者にする際は、この点に対する対策も考えてする必要があるのです。

 

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このコラムは、平成30年5月31日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。