負担付贈与に注意!

相続税対策として生前贈与は広く行われております。
贈与財産の評価は相続税評価で行えるため、一般的に通常の取引価格(時価)よりも低い評価額で財産の移転を行うことが可能です。
例えば、土地の場合の相続税評価は時価の8割程度であり建物は7割程度であるといわれています。
この評価のメリットをいかして、現金そのものを贈与するよりも不動産などに財産を転化させて贈与する事例もございます。
このことに着目して、不動産を贈与した場合に思わぬ落とし穴にはまっている場合もあるので注意が必要です。

(1)思わぬ落とし穴とは・・・?

贈与財産が例えば不動産で、借入金の担保に供していた場合で、その借入金を負担させる代わりに不動産を贈与する場合です。
この贈与形態を「負担付贈与」といい、個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産から負担額を控除した価額に課税されます。
この場合の課税価額は、その贈与財産の区分により次によります。
不動産の場合:【通常の取引価額(時価)】- 【負担額】
上記以外:【相続税評価額】 - 【負担額】

上記の算式からもわかるとおり、不動産の場合は時価ベースで贈与したことになるため、

【説例】
例えば、父から子へ時価2,000万円、取得価額1,500万円(取得時期:平成22年3月)、借入金700万円の不動産を贈与した場合は、
子の課税関係:1,300万円(=2,000万円-700万円)が贈与税の課税対象になります。
一方で、父が1/2未満で譲渡したこととみなされるため、取得価額1,500万円及び取得時期(絵批正22年3月)は、子に引き継がれます。
父:借入金相当額である700万円で譲渡したものとして譲渡税を計算しますが、1/2未満(2000万円×1/2)の対価での譲渡のため、父の譲渡損失はなかったものとして取り扱われます。

(2)贈与する財産に銀行借入金がある場合

負担付贈与の場合で銀行借入金の債務者変更をするには、銀行の承諾が必要になります。銀行、贈与者及び受贈者の三者間で「免責的債務引受契約」を締結します。この場合、贈与を原因とする所有権移転登記と「債務者変更」による抵当権変更登記とすることがポイントです。「債務者変更」による変更登記であれば、登録免許税は1個の不動産につき1,000円で済みますが、贈与者の抵当権を抹消して、新たに受贈者の抵当権を設定する場合には、さらに債権額の0.4%分の登録免許税が余分にかかるからです。

(3)預り保証金(敷金)付で賃貸用不動産を贈与した場合の負担付贈与の判定

では、賃貸用不動産には、入居者から保証金(敷金)を預かっているケースが多いですが、その賃貸用不動産を贈与する場合は負担付贈与になるか否かですが、細かい説明は割愛しますが、預り保証金等の法的性格は、停止条件付返還債務で、新旧所有者の間で当然に引き継がれるものであるため、一般的には税法で規定する負担付贈与には該当しないとこととされています。

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 このコラムは、平成28年2月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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