相続人と相続割合

「相続人と相続割合を知りたい」

Q:主人が亡くなりました。家族は、妻である私と息子が3人。主人の母と妹が同居しております。この場合、誰が主人の財産を相続できるのでしょうか?
また、相続できる人が複数人いる場合に、その相続割合は決まっているのでしょうか?

A:
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江東区門前仲町の税理士 渋谷広志(しぶやひろし)です。

 

奥様とお子様の3人の計4人が相続することができます。ご主人のお母さまや妹様は、ご主人が遺言で指定していない限り相続することはできません。
相続できる割合は、皆様のお話合い(これを「遺産分割協議」といいます。)で自由に決められ、誰か特定の人が全て相続できるようにすることもできます。
実務上お話をまとめていく過程で、法定相続分を参考に進めるケースが多く、万が一、お話合いまとまらず家庭裁判所等に調停を求める場合は、法定相続割合を基準に和解を進めるが多いです。

なお、誰が相続人かを調べる方法は、ご主人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて確認するとともに、相続人の方が相続時(ご主人の死亡時)に実在していたかを確認するために、相続人の現時点の戸籍謄本を取得して確定させます。

具体的説明の前に相続手続きでよく出てくる言葉を説明させて頂きます。
☑ 被相続人(ひそうぞくにん)・・・お亡くなりになった人で、ご質問の場合はご主人に該当します。
☑ 相続人(そうぞくにん)・・・被相続人(=ご主人)の財産及び債務を引き継ぐ(=相続)人で、ご質問の場合は、奥様と子供3人の合計4人に該当します。

相続人の調べ方

相続人は、民法でその相続順位から相続割合まで規定されていることから、相続人のことを「法定相続人」と、そして、その割合は「法定相続割合」といいます。

1.戸籍の遡り方

さて、相続人の調べ方ですが、まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要がありますが、最初のスタートは、最後(=死亡時)の戸籍謄本を取得し、そこから遡っていっていくことで取得することができます。
遡り方は、他の市区町村から本籍を移した場合(これを「転籍」といいます。)、婚姻した場合(就籍)そして、法改正などで様式が新しくなった場合(改製)などによる新しく作成されますが、作成される際に、従前の戸籍(本籍)が記載されているため、順に該当市区町村から取り寄せていくことで出生まで遡ることができます。

tohonzu.PNGしかし、関東大震災や太平洋戦争等で戸籍等が焼失している場合では、該当市区町村から「交付できないことの証明書(告知書)」(市区町村により名称が異なります)を発行してもらうケースもあります。

2.戸籍の確認の仕方

以上のように取得した戸籍ですが、転籍、就籍及び改製により新しく作成された戸籍には、従前の戸籍の情報が全て記載されているわけではなく、新しく作成された時点で籍が残っている人の情報のみが記載されています。例えば、改正以前にお子様が婚姻して就籍によりで新しい戸籍を作っていた場合は、改製により作成される戸籍には、そのお子様の情報は記載されません。
また、認知した子も母親の戸籍に記載されるため、父親の改正後の戸籍には記載されません。このように戸籍を遡らないと得られない情報があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要になるのです。

相続する財産の種類

次に相続する財産ですが、相続人は被相続人の財産の全てを引き継ぎます。この場合の全てとは、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含む全てです。
 このマイナスの財産には、借入金や未払金などのほかに、
・被相続人が行っていた保証債務
・被相続人が交通事故やトラブル等で負った損害賠償義務
などの、顕在化していないマイナスの財産も引き継ぎます。

余談ですが、皆さんはご自身のご主人(奥様)や父親(母親)が保証債務や損害賠償義務を負っていないと証明できますか?
借入金は、銀行から引き落としされているため、調べることができますが、これらの債務や義務はなかなか調べるのが難しいもので、ある日突然の債権者から通知で知るときもあります。ご家族間で日頃からコミュニケーションをとっておくことも重要です。

相続する順位とその割合

法定相続人の調べ方はすでにご説明しましたが、なぜ、本事例の場合、相続人が奥様とお子様3人の計4人で、ご主人の母親や妹が相続人になれないかについて説明いたします。
民法では、被相続人の扶養義務の優先順位遺の観点からだと思いますが、相続する順位について次のように規定しております。

法定相続人はこうして決まります

配偶者は常に相続人になります。(①)

次に以下の順位で相続人が決まります。

第1順位 :子供(代襲相続あり)

もし、他界した子供がいれば、その子供、つまり亡くなった人の孫も「代襲相続」といって法定相続人になります。

この子-孫-ひ孫...を「直系卑属」といい配偶者と同列に相続の権利を持ちます。(

第2順位 :被相続人の父母

子供や孫など「直系卑属」がいない場合は、「直系尊属」の父母、他界している場合は、祖父母、曽祖父母とさかのぼります。(

第3順位 :兄弟姉妹(代襲相続あり。ただし一代限り)

子供などの「直系卑属」、父母などの「直系尊属」ともにいない場合は、横の関係の兄弟姉妹が相続人になります()。

この兄弟姉妹が他界している場合は甥や姪が相続人となります()。

但し代襲は一代限りで、甥の子や姪の子は相続人になりません。

法定相続割合は、
 1.法定相続人の組み合わせ(A)と
 2.同一順位にいる相続人の人数 により異なります。

配偶者は常に法定相続人になるため、他の法定相続人が第1順位~第3順位のどれに該当するかで、法定相続割合は、1/2、2/3、3/4となります。

第1順位~第3順位の法定相続人は、同順位の相続人が複数いる場合は、その頭数で等分します。(注:非嫡出子の子供は現行民法上、法定相続割合の1/2ですが、平成25年9月4日の最高裁判決を受け、嫡出子と同様の相続割合に民法改正される予定です。)

例)妻と子が3人の場合
  • 妻は1/2
  • 子全員の取り分は1/2
    →これを3人で割ると
1人当たりは1/2×1/3=1/6

以上の表をまとめたのが右の図です。



相続人と相続割合のまとめ

相続人と相続割合についてトラブル防止の観点から民法で規定されていることがお分かりなられたかと思います。
また、これらを確定させるために、被相続人の戸籍謄本の取得が重要であることがわかったかと思います。
実際に被相続人の戸籍を取得する際は、市区町村窓口で、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をください」と伝えてください。

戸籍謄本の取得は相続手続きの第一歩です。相続手続きを司法書士、行政書士そしてわれわれ税理士などに依頼する際は、戸籍謄本の取得も併せてお願いするとお手を煩わせることなくスムーズに手続きが進みます。

相続人の確定は、相続手続きで一番重要です。くれぐれもお間違えのないようにご注意ください。

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このコラムは、平成30年8月31日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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