相続人に未成年者や意思能力が欠けている方がいる場合

 従前の相続では、相続人に未成年者がいるため、遺産分割にあたり特別代理人を選任するケースが多かったのですが、ここ最近は、相続人認知症などで意思能力が欠けているため、成年後見人や特別代理人を選任するケースが多くなりました。

 そこで、相続人が未成年者や意思能力が欠けているの場合の留意点について解説したいと思います。

家庭裁判所への対応

相続人が未成年者の場合

 未成年者が相続人である場合には、相続に関して利害のない者が特別代理人に選任されなくては、遺産分割協議書は成立しません。

 子供が未成年のうちに父親又は母親のどちらかがお亡くなりになった場合、その未成年者が成人になるまでは、未成年後見人が、未成年者の法律行為を代理したり承認したりし、扶養義務者・親権者である親が行います。
 しかし、未成年者とその未成年後見人との間で利益相反となる場合は、家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てを行う必要があります。

 その利益相反となる行為に、未成年者(子)と未成年後見人(親)が共に相続人である場合に行う産分割協議があります。

 お亡くなりになった親について相続税の申告義務があり、配偶者の税額軽減を活用することで節税したい場合には、その申告書には遺産分割協議書を添付しなくてはなりません。

 遺産分割協議は、全相続人の合意が必要ですが、相続人が未成年の場合は、特別代理人を選任する必要がることは先述のとおりです。

 特別代理人選任の際には、家庭裁判所への提出書類に遺産分割協議書の原案を添付しなければなりません。そして、特別代理人選任を承認する書類には、その遺産分割協議案が綴りこめられ割印されます。裁判官は未成年者法定相続分が確保されているかどうかが主たる審査事項です。

 ところで、相続税の申告において配偶者の税額軽減を活用することで節税になる一方で、未成年者の法定相続分を侵す内容にならざるを得ないケースがあります。
そのようなときは、家庭裁判所に上申書等で相続税の税額比較表を作成し、「配偶者の税額軽減をフルに活用した遺産分割のほうが、この家族にとっては経済的には一番幸せである」ことを説明しますが、応じてくれる家庭裁判所と、法定相続分にこだわり応じてくれない家庭裁判所があります。

相続人が意思能力を欠く場合 

 意思能力を欠く相続人がいる場合は、通常は成年後見人を選任しなければなりません。また、遺産分割協議においては、特別代理人が選任されなければなりません。そして未成年者と同様に法定相続分を確保しておくことが求められます。

 多くは老齢の配偶者に意思能力がないケースでしょうから、配偶者の税額軽減を活用し、相続税の負担を考慮すれば、遺産分割の障害となることにはならないでしょう。

 しかし、相続人間で異議のない遺産分割協議の内容次第では敢えて成年後見人や特別代理人を選任しないことも考えられます。
なお、家庭裁判所に提出する財産目録の記載財産についても工夫が必要ですので注意が必要です。
また、相続税の税金の面では配偶者の税額軽減や税額控除の適用を受けられるようにして節税を図ることも必要です。

申告期限までに遺産分割協議に間に合わなかった場合

 相続人が複数おり、その相続人のなかに意思能力に欠けている者がいる場合、成年後見人や特別代理人の選任に時間がかかり、相続税の申告期限までに遺産分割協議が整わないケースもあります。

 このような場合に、申告方法や添付書類に誤りがあったことにより、
① 配偶者の税額軽減
② 小規模宅地の特例
③ 相続税の取得費加算の特例
④ 相続税の物納
⑤ 農地等の相続税の納税猶予の特例

が受けられないなどの不利益を被るときもありますので、必ず税理士などの専門家に相談することをお勧めします。


このコラムは、平成26年2月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談下さい。