賃貸建物を贈与した場合のその土地の評価は?

不動産所得はその建物所有者に帰属することが原則です。不動産オーナーの中には、所得の増加に伴い将来の相続税が増加する方もいらっしゃいます。
そんな不動産オーナーが実行する相続税対策として、賃貸建物のみ推定相続人(例えば、父から子へ)に贈与し、店子からの家賃収入はその推定相続人に移転することで将来の相続税の負担を軽減する方法を取られる方もいらっしゃいます。
相続税対策としては、これはこれで有効ですが、贈与した後のその土地の評価を勘違いされている方がいるので、今回はこの点について解説してみたいと思います。

建物贈与後の地代の収受の有無

通常は、相続対策で行われているので贈与者及び受贈者間(以下「親子間」といいます。)で地代の収受は行われない(これを「使用貸借」といいます。)と思います。この場合の贈与していない土地の評価ですがどうなるでしょうか?

自用地として評価?それとも貸家建付地として評価?

正解は貸家建付地として評価されます。しかし、贈与後に賃借人に異動があった場合は、その異動した部分は自用地評価することになりますので注意が必要です。
では、貸家建付地としての評価を継続させる方法はないでしょうか?

・・・あります。

贈与する前に不動産管理会社に一括して賃貸(サブリース)しておくことで、贈与後に実際の利用者が異動しても、それは転貸借人が異動するだけなので、賃借人に異動は生じません。
これにより、貸家建付地としての評価を維持することが可能になります。

・・・ただし、この場合でも注意が必要です。

それは、・・・一括貸付先が貸主やその親族が経営する会社で空室がでた場合に、積極的に入居者確保をしなかったり、管理を別の管理会社に再委託するなど、単に土地の評価を貸家建付地として評価したいがために一括貸付したと課税庁側が判断した場合には、貸家建付地としての評価が否定される可能性があります。

・・・さらにそれに加えて、重要な注意点が・・・

このプランを実行する場合に見落としがちなのが、残った土地は貸家建付地として評価できる一方で、土地の利用が使用貸借の場合は、小規模宅地の特例対象宅地には該当しないことです。
従って、実行前には他に小規模宅地の特例を限度面積いっぱいまで利用できる、小規模宅地の特例の適用を上回る節税効果が期待できるなど、入念なタックスプランニングが必要になります。

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このコラムは、平成28年5月1日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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