父の遺産分割協議が整う前に母に相続が開始した場合の相続税の申告と"小規模宅地の特例"の適用

Q:私の父母は、父所有の土地付き家屋に居住しておりましたが、令和元年7月13日に父が、続いて、令和2年3月7日に母が亡くなりました。
私(長男)は、上場会社に勤務し10年以上同社の社宅に居住しており、もうひとりの相続人の弟(次男)は、家族とともに弟所有の自宅に5年以上居住しています。
父名義の実家については、最終的に私が相続することで弟と話しつきましたが、このようなケースの場合、父名義の実家の相続方法は二通りあるかと思います。

すなわち、
a 父の相続で直接、私が相続する
又は
b 一旦、母が相続したうえで、母の相続として私が相続する、の二つです。

私のような場合、この2つの相続方法の違いにより、相続税が異なりますか?

A:
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江東区門前仲町の税理士 渋谷広志(しぶやひろし)です。




ご質問ありがとうございます。
ご相談者様のように、事前に確認されることは良いことです。
ご懸念されたように、ご実家をお父様から直接相続される場合と、一旦、お母さまが相続した後に相続する場合で、異なる制度があり、ご実家以外の相続財産の状況によっては、相続税にも大きな影響を及ぼすときもあります。
その異なる制度とは、「小規模宅地の特例という制度です。

"小規模宅地の特例"とは、相続した土地や敷地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度で、この特例を適用することにより税金を安くできます。
aのお父様から直接、実家を相続されるケースでは、"小規模宅地の特例"は適用できませんが、bのお母さまの相続を経由して相続するケースでは、お母さまはもちろん、ご質問者も、お母さまの相続税の申告期限まで継続して所有しているなどの要件を満たせば、小規模他宅地の特例が適用できるものと考えます。
ご質問では、それぞれの相続財産がわかりませんので、仮に、次の財産構成で、相続したとすると、(わかりやすくするため、極端な例にしております)

【父の相続財産】
土地(200㎡)・・・2000万円("小規模宅地の特例"適用後は400万円)
建物・・・1000万円
預金・・・3000万円

【母の相続財産】
預金・・・1500万円

この場合、父の相続における相続税は、aのケース(兄がご実家を、弟が預金を相続)では、相続税の総額は120万円ですが、bのケース(母がご実家を、弟が預金を相続)では、お母さまはご実家について"小規模宅地の特例"の適用ができるため、相続財産の総額は基礎控除(4800万円)以下になるため、0円になります。

そして、母の相続における相続税は、aのケースでは、母の相続財産は1500万円と基礎控除(4200万円)以下のため、相続税は0円。bのケースでも、母の相続財産は、ご主人から相続したご実家分(3000万円)が増加し、相続財産は4500万円と基礎控除を超過しますが、社宅住まいの兄が相続することで、"小規模宅地の特例"が適用でき、結果として、相続財産は2900万円と評価することが可能になり、bのケースでも相続税は0円になります。
このように、父と母続けて相続があった場合には、父の相続財産の相続方法により、トータルの税金が異なるときもあるので、必ず専門家に相談することをお勧めします。



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このコラムは、2020年5月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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